「こんにちは〜」
「あっ、いらっしゃい、たっちゃん」
「こんにちは、なゆちゃん。祐一いる?」
「うん。今部屋に案内するよ」
 翌日、達矢が水瀬家に遊びに来た。名雪が玄関で出迎え、俺の部屋に案内して来た。
「こんにちは、祐一」
「おう」
「早速だけど何して遊ぶ」
 軽い挨拶を交わした後、早速達矢が何をして遊ぶか訊ねて来た。
「そうだな……。ポケモン持ってるか?」
 普通の対戦ゲームをプレイしても余り興がない。達矢が持っているならポケモンバトルも面白いだろうと、達矢に所持の有無を訊ねてみた。
「うん、持ってるよ」
「じゃあ、バトルしようぜ!」
「僕は別に構わないよ。でもその前に……」
 そう言葉を切り、達矢は持って来たリュックサックから何かを取り出した。
「これで闘ってみない?」
 達矢がリュックから取り出したのは、バーコードバトラー2だった。
「BB2か、懐かしいな。しかもC0付きか。BB2本体とC2は持ってたけど、C0はなかったな」
「へぇ〜、C2持ってたんだ〜。C0だと対戦以外使い道ないし、僕もそっち買えば良かったな〜」
「けど、C2だとCPU対戦しか出来ないし、汎用性はC0の方が高いだろ?」
「それはそうなんだけどね。でもさ、日本製バーコードだと合体させても攻撃力以外BB2の上限超えないし、HPが199900、ST、DFが99900あってもあんまり意味ないんだよね。その点C2だと成長させて数値上げられるし、拡張機能の特徴を十分活かしていると思うんだよね」
「あの、さっきから二人とも何の話しているの……?」
 何気に達矢と共に俺の部屋に入って来た名雪だが、当然の如く話に付いていけないようだ。
「そういえばジュンもC0持ってたと思うんだけど、せっかくだから2台繋げてC4でバトルしない?」
「C4か。正直やったことは殆どないな。けど、あと一人はどうするんだ?」
「なゆちゃんでいいんじゃない?」
「えっ!? わ、わたし?」
「ま、妥当な線だな。という訳で名雪、みんなから集中攻撃食らって真っ先に死ぬ羽目になるだろうが、堪え抜いてくれ」
「えっ!? えっ!?」
 自分の意志とは無関係にバトルに巻き込まれることに、名雪は困惑気味のようだ。
「で、バーコードはどうする? 流石にこっちに持って来てないぞ」
「ホワイトカードは僕が持ってるし、商店街で集めたバーコードで闘うってのでいいんじゃない? 僕が持ってるのを使うんじゃ公平じゃないし、それでいいと思うんだけど」
「そうだな、そうしよう」
「じゃあ決まり! バーコードの数字の読み方は覚えてる?」
「ああ。基本スペックと戦士と魔法使いの判別位はな。C0の僧侶、聖戦士の判別の仕方、特殊能力の判別の仕方は分からないけど」
「それだけ分かれば十分だよ」
「わたしは分からないよ……」
 BB2さえろくに知らない名雪だ。バーコードの読み方を知っている筈はない。
「じゃあ、なゆちゃんは僕が持ってるバーコード使うって風にすればいいんじゃない?」
「名案だな。それで力バランスがちょうどよくなるかもな」
「うん。じゃあ、1時間半後、祐一の部屋にまた集合ということで。ジュンには僕から連絡入れておくから」
「諒解」
 バトル開始の時間が決まると、達矢は一足早く退出した。
「さて、俺も探しに行くとするか」
「祐一、わたしはどうすれば?」
「俺の部屋でみんなが集うのを待ってろ」
「う〜、分かったよ……」
 渋々ではあるが、名雪は俺の言葉に従った。俺は一人名雪を部屋に残し、強いバーコードを求めに商店街に繰り出して行った。



第六話「見知らぬ少女との邂逅」


「HP23400、ST10900、DF1600……。う〜む、微妙なスペックだ。しかし聖戦士を見付ける為に一応押さえておくか……」
 商店街に出て、早速俺はバーコードを探していた。目的は聖戦士のバーコードを見つけることだ。判別の仕方が分からないので地道に探すしかない。
 ちなみにバーコードの読み方はこんな感じだ。まずはキャラクターとアイテムの判別の仕方。右一桁が0〜4ならキャラクター、5〜9はアイテムとなる。また、5は一回限りの武器、6は無限に使える武器、7は一回限りの防具、8は無限に使える武器、9はHP増幅アイテムとなる。
 戦士と魔法使いの見分け方は、右八桁が0〜6なら戦士、7〜9なら魔法使いとなる。僧侶と聖戦士の判別方法はよく分からない。どちらも魔法使いより更に数がないのは確かだが。
 ステータスの読み方は、HP、ST、DFによって異なる。ちなみにSTは攻撃力、DFは防御力を表す。
 HPは二桁目が一万の位、以下三桁目が千、四桁目が十の位となる。数値の算出方法は一万の位は数字÷2で小数点以下を切り上げた数字、千、十の位は数字そのものが数値となる。この算出で求められる最高数値は49900となる。
 STは三桁目が千の位、四桁目が十の位となる。算出方法は、千の位は数字+5で算出された数字の一の位に2を足した数値。算出された数字が8、9の場合、例外的に攻撃力が10000を超える。十の位は数字+5で算出された数字の一の位の数値となる。この算出で求められる最高数値は11900となる。
 DFは四桁目がが千の位、五桁目が十の位となる。算出方法は千、十の位共に数字+7で算出された数字の一の位の数値となる。この算出で求められる最高数値は9900となる。
 算出方法を見れば分かるが、HP、ST、DFが共に最高数値のバーコードは基本的に存在しない。例えばHPが49900のバーコードは、STが6400、DFが6000〜6900となる。DFはそこそこ高いので防御タイプではあるが、攻撃力が不足気味である。また、攻撃力が11900のバーコードは、HPが4400〜44400、DFが100〜1900となる。今度は防御力が不足する。
 これらの算出方法から導き出した理想スペックは、HP44200、ST11700、DF9900となる。このスペックで且つ聖戦士なら最高なのだが、そんなバーコードは日本全国探しても見付かるかどうかは分からない。
 もっとも、今回の俺の目的は聖戦士を見付けることである。理由は単純だ。職業が聖戦士でホワイトカードにダンバインの絵を描いた「聖戦士ダンバイン」のカードを作りたいだけだ。これでアイテムカードを武器とし、名前を「オーラソード」とする。
 別にダンバインの絵を描いたからといって、『遊戯王』の様にカードの絵が実体化する訳ではない。用は単純な趣味だ。
 ちなみに聖戦士なら名前を「ガラハド」で武器を「アイスソード」にするというネタもあるが、即行で死にそうなので余りやりたくないネタだ。
 とりあえず目的達成の為に八桁目が0〜9のバーコードを各2つ、計20個集める計画である。
「ふう、とりあえずこの店ではこれくらいでいいか」
 そこそこ強いバーコードを8、9個程集め、俺は次の店を目指した。



「……」
 二軒目の店を出た辺りからだろうか、誰かに尾行されている気がする。人に恨まれるようなことをした記憶はないのだが。
(ひょっとしてあゆか?)
 などとも思ったが、その可能性はすぐ否定された。あいつの場合尾行などという姑息な手は使わず、正面から突撃してくる筈だ。
「……この感じ、間違いない……。やっと見つけた……」
「っ!?」
 か弱い少女の声が聞こえたと思った次の瞬間、強烈なプレッシャーを感じた。
(気圧されているというのか……? この私が!?)
 プレッシャーの元を確かめる為後ろを振り返ると、そこには布を身に纏った少女の姿があった。
「あなただけは許さないから……」
 身に纏った布と取り払い、一言少女がそう言った。
(許さない? どういうことだ?)
 見知らぬ少女が言った一言、俺の何を許さないのか全く理解出来なかった。ただ一つ言えるのは、その少女の俺を許せない想いが先程のプレッシャーの正体だということだ。
「かくごぉぉぉ!!」
 次の瞬間、俺に少女の拳が襲い掛かった。
「そうそう当たるものではない!」
 しかし少女の攻撃は非常に遅く、あっさりと回避出来た。
「このっ!」
 一撃目を外した少女の次の攻撃が来る。
「当たらんよ」
 一撃目と同じ速さの二撃目もあっさりと回避することが出来た。
「ええいっ!」
「甘いな」
「やあっ!」
「貴様の攻撃、既に見切った!」
「とおっ!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄」
 その後何度も攻撃を仕掛けて来る少女だったが、一撃も俺に当たらなかった。
「はぁはぁはぁはぁはぁ……」
 ついに少女は息切れ、攻撃を撃ち止めた。
「所詮貴様の攻撃など蟷螂の斧!」
 などと俺はソロモンの悪魔的な台詞で自分の余裕を見せた。俺に対する恨みは相当のようだが、如何せん身体が付いていかないようだ。
「許さない、許さない、許さない!!」
「っ!?」
 一体やつれ果てたこの身体の何処からそんなプレッシャーが出て来るのだろう? 再び感じた少女のプレッシャーに、俺は動かすことが出来なかった。
「くっ! 一体、俺に何の恨みがあるって言うんだ!」
「許さない! よくもあたしを7年もおいて……」
「7年っ!?」
 7年前といえばちょうど俺がこの街に来なくなった年。分からない、あの年に恨み言を買う行為をしたというのか……?
 ドサッ。
 完全に力を使い果たしたのか、少女はその場に倒れてしまった。
 一体彼女の目的は何だったのだろう? その真相を語らぬまま少女は倒れたのだった。



「何してるの、祐一?」
「た、達矢っ!?」
 そんな時、俺と同じくバーコードを探していた達矢が通り掛った。
「いや、あの、これはだな……」
 あまりよい状況ではないと思い、俺は咄嗟に達矢に事情を説明しようとした。
「ふ〜ん、成程。君にはそういった趣味があったのか……」
「おい!」
 達矢が何か勘違いしてそうなので、すかさず俺はツッコミを入れた。
「まあ、理由は聞かないけど家に連れ込んだ方がいいんじゃない?」
「その方が良さそうだな」
 達矢の言う通りだと思い、俺は少女を担いで家に運ぶことにした。
「それでいつ犯るの?」
 開口一番、達矢がそんなことを訊ねてきた。
「犯るって、お前何か勘違いしてるんじゃないのか……?」
「えっ? 少女を拉致して監禁して陵辱するのは男の永遠の夢じゃない?」
 そんな台詞をさらっという達矢。一見か弱そうに見えるこの男だが、その心には鬼畜の魂が眠っていると見た。
「お前、最近それ系のエロゲーやったろ?」
「うん。『絶望』を攻略中だよ」
 「絶望」って、それこそ少女を拉致して監禁して犯すあのゲームか。18歳にも満たないというのに18禁ゲーム、それも純愛物ではなく鬼畜物をやるとは……。この男、根っからの外道だ。
「言っておくが、そんな目的はないぞ……」
「分かってるよ。ともかくこんな状況だと今日は遊べそうにないね」
「確かにな……」
 バーコードバトルはいつでも出来るし、とにかく今はこの少女を目覚めさせ事情を訊く事が最優先だろう。
「ジュンには僕から連絡入れておくから」
「ああ済まない」
 水瀬家に着き、達矢は家に戻りバーコードバトルの中止を潤に伝えることとなった。
「じゃあ〜ね。犯る時は僕にも一言声を掛けてね〜〜」
「だからそんな目的ないって言ってるだろ!!」
 そんな台詞を言い残し、達矢は自宅へと戻って行った。冗談のつもりなのだろうが、達矢が言うと本気に聞こえそうで恐い。
(それにしても……)
 ふと少女に目をやると、どこか寂しげな顔で眠っていた。先程まであれだけ俺を恨んでいた素振りを見せていたというのに。
 この寂しげな顔の奥にはどんな気持ちが眠っているのだろう? 目覚めた時少女はその想いを語ってくれるのだろうか……?



「ただいま〜」
「お帰り祐一〜、思ったより早かったね……って、誰その娘?」
 少女を抱えて部屋に戻ると、当然の如く名雪が訊ねて来た。
「道端で倒れてるのを見掛けてな、そのまま放っておくのも可哀想だと思って連れて来たんだよ」
 真相を語ると面倒なので、とりあえず襲われたという部分は伏せた。実際に倒れたことは倒れたので、嘘は言っていない。
「という訳で、悪いけど何処か空いてる部屋に蒲団を敷いてくれないか?」
「いいけど祐一、何かやましいこと考えてない?」
「考えてるか!」
「冗談だよ。隣の部屋に敷いてくるね〜」
 そう言い、名雪は俺の部屋を後にした。
「まったく、達矢と思考があんまり変わらないぞ……」
 まあ、「犯る時は僕にも一言声を掛けてね」なんて言わないだけマシだけど。
「祐一、敷いたよ〜」
 暫くすると、蒲団を敷き終えた名雪の声が聞こえて来た。
「サンキュー、名雪」
 俺は少女を担ぎ、隣の部屋に移動した。
「さてと、後は俺が一人で面倒見てるから、お前は自分の部屋にでも戻ってくれ」
「分かったよ。祐一、手を出しちゃダメだよ」
「誰が手を出すか!」
「冗談だよ。祐一は優しいんだね」
 そう言い残し、名雪は部屋を後にした。
「優しいか……」
 確かに自分に襲いかかって来た者を助けるのだから、優しいのかもしれない。いや、単に変わってるだけか。
「それにしても……」
 すやすやと眠っている少女の顔をじっくり眺めていると、なかなか可愛い顔に見えて来る。
「そういえばこの寒いのにスカートを履いてたな。パンティーの色は何色……って、何考えてるんだ俺は〜〜」
 可愛い顔に惹かれ妄想に走ってしまったことに、俺は自責の念にかられた。これでは鬼畜ゲーマの達矢と思考レベルが変わらない。
「落ち着け! 俺は真相を知りたいからこうしてるんだ。決してやましい理由じゃなく……でも、少し身体を触るくらいなら別に。揉み応えのある柔らかそうな胸してそうだし……ぐわわ〜〜、早く目覚めろ〜〜!!」
 己の性欲との葛藤から、俺は少女が目覚めるのを心から待ったのだった。



「ん……」
 数十分後、少女の口が微かに開いた。
「ここは……? 懐かしい匂いがする……戻って来たの……?」
「!?」
 開口一番語った少女の台詞は、意味深なものだった。それはまるで嘗てこの家に居たみたいな……。
「気が付いたか?」
「!!」
 一言少女に声を掛けると、突然襲い掛かって来た。余りに突然のことで回避する余裕もなく、俺は少女に掴まれてしまった。
 グ……ググ!
「くっ、何だこの締め付けは!?」
 俺を締め付ける少女の力は、とても少女の力とは思えない程の力だった。一体この少女の何処にそんな力が眠っているというのだ。
「許さない……許さない……!」
「またそれか……。一体何を許さないって言うんだ……!」
「よくもあたしを7年もおいて……。ずっと、ずっと待っていた……。すごく、すごく寂しかったんだから!!」
「寂しかった!?」
 その瞬間、少女の顔が変わった。今まで俺を睨みつけていたような表情が、何かを懐かしむような顔に変化したのだ。
「逢いたかった……ずっと逢いたかった……」
 そう俺の胸の中で泣き崩れる少女。その顔は心のそこから再会を喜ぶ顔だった。
「よしよし……」
 この少女が何者か分からない。俺はまったく知らないし、もしかしたなら誰かと俺を見間違えているのかもしれない。
 けど俺は少女をなだめようと、少女の頭を軽く撫でたのだった。さっき襲い掛かってたのも、自分を置いた者に対する逢いたい気持ちがいつのまにか恨みになっていたからなのだろう。ならばこうしてやることが少女の恨みを払拭する最良の手だと俺は思った。
 彼女が誰かと俺を勘違いしているのでも構わない。とにかく俺は彼女の想いを受け止めてやりたかった。
「あぅ……気持ちいい……」
 俺が頭を撫でてやると、少女は徐々に泣き止み、静かに眼を閉じて行った。
「さて、もう少し寝かしておいてやるか」
 俺は少女を優しく抱え、静かに蒲団へ寝かせた。
「じゃあな、ゆっくり眠っていろよ」
 真相を聞くのは後でいいだろう、とにかく今は少女をゆっくりと眠らせてやりたい。そう思い、俺は一時部屋を後にした。



「あっ、祐一〜」
 台所に行くと、そこには名雪の姿があった。
「部屋に行ってたんじゃないのか?」
「お昼近いからね。あの娘の様子はどう?」
「すやすやと寝ているよ」
「そう。どこの娘とかは分かったの?」
「いや、まだだ」
 部屋に連れて行った時から色々と聞き出そうとは思っていたが、何一つ聞いていない。とりあえずもう襲い掛かっては来ることはないだろうから、起きたらじっくりと聞き出すとしよう。
「祐一、お昼何にする?」
「軽い物がいいな。ファーストフードでもいい。近くにマックやらモスバーガーはあるか?」
「どっちも市街地の方に行かないとないよ」
「そうか」
 一応聞いてみたが、やはりこの街にはないようだ。市街地までは車で十分程度の距離ではあるらしいが、歩いていくのは億劫だ。冬の今の季節じゃあ自転車で行くのも危なそうだし。
「ならカップラーメンとかあるか?」
「わたしのお母さん手作りが基本だから、家にインスタント食品はないよ」
「そうか」
 そういえばここに来てからの秋子さんの料理はすべて手料理だった。毎日インスタント食品ではない手料理が食えるのは幸せの限りだが、こういう時食うのがないのは辛い。
「うどんならあるけど、鍋焼きうどんにでもして食べる?」
「鍋焼きうどんか、悪くないな。作れるのか?」
「それくらい作れるよ」
「じゃあ頼む」
「分かったよ」
 出来るまで十数分は掛かるということだったので、俺は一時部屋に戻ることにした。
(そういえば今日は『アニメージュ』の発売日だったな……)
 部屋で漫画を読んでいてふと思い出した。ちょっと商店街に買いに行こうと思ったが、先程バーコードを探していた限りではアニメ雑誌が売っている気配はなかった。やはり市街地まで赴かないと手に入らないのだろう。
(仕方ない……。後から潤にバイクで買いに行くように頼むとするか……)
「祐一〜、できたよ〜」
 台所の方から名雪の声が聞こえたので、俺は一階へ降りた。
「お、美味しそうな鍋焼きうどんだな〜」
「祐一の為に腕に奮いをかけたからね」
「じゃあ早速いただきま〜す」
 キチンと食べる前の挨拶をし、俺は名雪特製の鍋焼きうどんを食し始めた。
「ハフハフ……チュルチュル……」
 うどんは熱く少しずつしか口に出来なかったが、うどんの隅々まで味が染み込んでおり、非常に味わい深い鍋焼きうどんだった。
「ふ〜、食った、食った。まるで一流の店のを食べてるみたいだった」
「もう、誉め過ぎだよ祐一〜」
「あっ、そういえば……」
 昼食を取り終えて、俺はふと思った。自分が腹を空かせたくらいだ、あの少女も腹を空かせているに違いない。
「ちょっと様子を見てくるか」
 腹を空かせたままにしておくのは可哀想だし、何が食べたいか聞いてみるとしよう。そう思い、俺は少女の様子を見に2階へと昇って行った。

…第六話完


※後書き

 改訂版第六話です。「Kanon傳」の同じ回ですと、前半部分で三偉人記念館巡りをやっていましたが、改訂版では削除しました。理由としましては、地元色が強いネタであり、そんなネタ誰も楽しまないだろうと思いましたので。
 その代わりにBB2ネタが入ったのですが、作中の名雪のように何言っているか分からない人が多いかもしれませんね(笑)。かれこれ12、3年程前に流行ったおもちゃですので。
 さて、オリキャラの達矢ですが、鬼畜ゲーマーであることが判明しましたね(爆)。何か変な方向にキャラを立たせてしまいましたが、オリキャラなので問題ないでしょう(笑)。
 オリキャラは原作キャラのような制約がないので書くのは楽ですね。キャラを立たせるのが難しいですが。

七話へ


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